まいちょんの学びの部屋

アメリカ在住打楽器奏者の日々の学びをシェアするブログ

ウェストサイドストーリー

こんにちは。アメリカで打楽器やってますまいちょんです。今週からウェストサイドストーリーのミュージカルのリハーサルが始まりました。

 

でも今回のホールはピットがないのでオーケストラは舞台の下に陣取り、お客さんの真ん前で演奏するというまたへんてこりんな構図なんですが、お陰で舞台の様子が間近で見れるので私にとっては嬉しい限りです。

 

丁度こんな感じで舞台が見れます。

 

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舞台ばっか見てないで演奏に集中しなさいと怒られそうですが。

しかも普段はヒマな打楽器ですが、ミュージカルとなると忙しいんです。一人で沢山の楽器を担当するので、それこそ私も役者に負けず劣らずの打楽器ダンスを繰り広げております。

 

ウェストサイドストーリーとは

ブロードウェイでもお馴染みのウェストサイドストーリー。これはロミオとジュリエットの現代版みたいなお話。舞台は60年代ニューヨーク。アイルランド系移民とプエルトリコ系移民のギャングの闘争とその中で出会ったトニーとマリアの恋愛と悲劇を描いたお話。ミュージカルにしては超シリアスなお話です。なんせ最後はマリア以外みんな死にます。しかもロミオとジュリエットは一応最終的に両家は仲直りしたっぽいけど、こっちはそこら辺カットされてて、社会情勢の問題だけが浮き彫りにされてめっちゃ暗い。え、こんだけ引っ張ってこのオチ?みたいな何ともモヤモヤするエンディングです。ちなみにジュリエットは死ぬのに何でマリアは死なないのか謎です。

 

作曲家はニューヨークフィルの指揮者で有名なレオナルド・バーンスタイン。このミュージカルの歌はかなりヒットして、今でも色んな所で耳にします。有名どころは、Maria、Somewhere、America、I Feel Pretty、Tonightといったところでしょうか。打楽器奏者のワタクシとしては、ビブラフォンが大活躍するCoolもリストから外せません。

 

バーンスタインの作曲技法

そして、このキャッチーな曲達を世に送り出したバーンスタインですが、すごいのはそこだけじゃないんです。このミュージカルの曲は聞けば聞くほど奥が深い。

 

ホルンで一緒に演奏している旦那さんがポロっと一言おもしろい事を口にしたんです。

 

「バーンスタインってかなり経済的だよね。全部の曲がMariaのアレンジみたいなもん」

 

最初聞いた時は、同じ曲を色んな場所で使い回ししてるっていう意味なのかなと思って、まあそんなのは当たり前でしょうと深く考えてなかったんですけど、さすがは作曲家でもある旦那さん。普通に演奏してるだけで曲の分析ができてしまうようです。

 

実は全然違う曲の中にもよくよく聞けばマリアがいるんです!!

 

“Maria”っていうのはトニーがマリアに出会ってから恋に落ちてただアホみたいにマリアマリアって連呼する歌です。

 


West Side Story (3/10) Movie CLIP - Maria (1961) HD

 

その「マリーアー」って唱えるメロディが「ファシードー」という三音から構成されているんですけど、旦那さん曰く、これはシェーンベルクなどの作曲家達が好んで使った147という音程を入れ替えた471のインターバルらしく、バーンスタインはこの147のコンビネーションをこのミュージカルの色んな楽曲で使用しているらしいのです。例えばさっき言ったビブラフォンがクールな”Cool”の曲も良く聞いてみたらマリアのオンパレードなんです!実際の始まりの三音もマリアと全く同じです。

 


West Side Story - Cool (1961) HD

 

他にもprologueやJet SongやSomething’s Comingとかにもマリアがいるんです!

 

怖いー!

 

のかどうかはさておき、何となくウォーリーを探せ的な気分になります。

 

ちなみにこの147の番号が謎の方のために簡単に説明しますと、ただ単にドレミファソラシを1234567って当てはめた番号で、丁度4と7(ファとシ)のインターバルがトライトーンになるという組み合わせです。トライトーンというのは日本語では全三音と呼ばれるんですが、その名のごとく、3つの全音で構成される完全4度と完全5度の間の音程です。完全4度(ドとファ)とか完全5度(ドとソ)の組み合わせはキレイにハモれるんですけど、その間のトライトーン(ドとファ#)になるとどうもへんてこりん。モーツアルトの時代ではトライトーンは悪魔の音程と言って忌み嫌われた音らしいですが、悪魔と呼ばれるだけあって何ともまた不安定な不気味な音程なんです。

 

不気味な音程のオンパレードのラブソングってどういう事?!

 

って一瞬思うんですが、それが何故かバーンスタインの手にかかると何とも美しい曲に仕上がってしまうという。逆に何となくミステリアスな妖艶さを醸し出して余計に観客の心を引きつけます。そしてこの不安定な音程がこれから起こる悲劇の伏線的な役割も兼ねているという。うーんバーンスタイン恐るべし。

 

ちなみに最後は話が未解決のままエンディングを迎えるウェストサイドストーリー。フィナーレでマリアが死にゆくトニーと歌う”Somewhere”は途中でトライトーンに遮られます。トライトーンだけが最後まで鳴り響いて幕が閉じるという、音楽的にも未解決なエンディング。最初から最後までこんなにトライトーンなミュージカルって見たことないですよ(笑)

 

旦那さん曰く、バーンスタインは”Cool”の中間部にこれもまたシェーンベルクがあみだした十二音技法も取り入れてるらしいです。これは無調音楽によく使われる技法で、12音全部使うまで同じ音を繰り返さないという技です。これをまたマリアのピッチセットに混ぜ込んで使いこなすってすごいねバーンスタイン。

シェーンベルクとかの音楽って学者とかオタクの人には受けたけど、一般の人には難しすぎて全然受けなかったんです。そのギャップを繋いだっていうのは音楽界にとってもすごい貢献だと思うんですね。

そしてそんな事を演奏しながら聞き分けられる旦那もすごいね。私なんて自分のパート弾くのと舞台見てるのに必死で全然気づかなかったですよ。

 

とまあ色々奥が深いウェストサイドストーリー。映画版とか色々あるので興味があれば見てみて下さい。悪魔の音程を意識しながら見てみたらまた違った面白さがあるかもしれません。