まいちょんの学びの部屋

アメリカ在住ママ兼打楽器奏者の日々の学びをシェアするブログ

音楽性って何なん

こんにちは。テキサスで打楽器を教えておりますまいちょんです。

 

もうすぐ高校のオールステートオーディション(テキサス州の選抜バンドのオーディション)が迫ってきました。これに選ばれる事は大学の奨学金をもらう対象になったりと、かなり名誉な事なのです。毎年テキサス中の高校生がこのオーディションの為に課題曲を練習します。

 

先日、テキサスの打楽器の教育関係者のFacebookのグループでディスカッションされていたお題が目にとまりました。そのお題とは、

 

オーディションで弾く場合、楽譜に忠実に演奏するべきか、自分なりの表現方法で演奏するべきか。それを生徒にどのように指導するべきか。

 

というものです。この質問はすごい深くて色々な意見があったんですが、ある意見がすごく引っかかりました。というのは、

 

Musicality(音楽性)とはケーキの上のデコレーションのようなものなので、まずはケーキの土台(基礎、音やリズムの正確性)が最優先。

 

というものでした。まあ音読めてない状態でどれだけ感情込めて弾いたところでオーディションに受かりはしないでしょうけどね。それに音楽性云々って主観的な判断なので審査員の好みにもよるし、客観的に審査される所はやっぱり音の正確性だったりするわけで、やっぱりオーディションで受かりやすいのはロボットみたいに弾く子が多いのは事実です。

 

でも、教育の観点で考えると、楽譜通りに演奏するスキルだけ教えるってどうなのかなって思います。そもそも、音楽性がデコレーションっていう考え方ってどうなんって思います。なんかみんなして音楽性音楽性って言うけど、結局誰も音楽性とはなんぞやってきちんと把握してないような気がします。特にケーキのデコレーションっていう考えって、ご飯のふりかけみたいな、あってもなくてもいいような存在?なんかとりあえず時間余ったから強弱つけてみる?みたいな?ここら辺なんかちょっと隙間空いてるから生クリーム塗ってごまかしとく?みたいな?

 

なんかもうその地点でもう絶対いい音楽作れへんやんって思ってしまいます。

 

音楽性とは、ズバリ、

楽譜に書かれている事を深く読み取り、表現する力の事です。

(あるピアノ教室の方から引用しました)

 

あえて言うなら読解力?この作曲家が音を通して何を言わんとしているのかを読み取って、それを上手く表現する練習って、楽譜の読み方とか手の動かし方とかよりもっと重要なんじゃないのかと思うんです。

 

まあ確かにそれは上級レベルなのかもしれませんが、例えば幼稚園のお遊戯会で子どもに劇をさせる時に、話の内容とか教えずに台本だけきっちり読む練習させます?この話の内容は難しすぎるから知らなくていいですって言います?それで、どもったらあかんからって発音練習ばっかりさせます?早口言葉の大会みたいになってしまいますやん(笑)

 

テキサスの高校生はみんなマーチングバンド上がりで基礎はバッチリですけどみんなロボットみたいに演奏するのはそういう教育されてるからに他ならないと思うんです。そこにフォルテって書いてあるから大きな音で叩く。みたいな。何で作曲者がそこにフォルテ記号をつけたのかって事は全然考えない。

マーチングバンドはもともとミリタリーの音楽隊が原型で、軍の統制を取る事が目的だったので、全体の統一感だとか、いかにきっちりハッキリ正確に演奏できるかが重要になってくる訳です。なのでフォルテっていう指示を無視するなんてとんでもないです。でもそれをクラシック音楽に当てはめてるのはお門違いです。バンドディレクターの先生達もマーチングバンド上がりの人ばっかりで、マーチングが音楽の全てだと勘違いされてる方が大量にいて、それを子どもたちに指導してる感も否めない。

 

そもそも今回のマレットの課題曲はヘンデルのバイオリンソナタで、強弱記号とかはマリンバ用にアレンジした人が勝手に付けたものでヘンデルが書いたわけでもないのに、そこに変に固執して必ずしもフォルテで弾かなければならないってわけじゃないです。だからと言って音楽が言わんとする事に相反する強弱で弾くことが個性的って訳でもない。その曲のスタイルに合わせた絶妙なニュアンスで弾くにはやっぱりちゃんと曲を理解する必要があると思います。

ヘンデルが誰かも教えない。この曲がいつの時代に作曲されたかも知らない。それでマーチングバンドと同じ様に機械的に演奏する事って、ロミオとジュリエットの演劇をジーパンとTシャツで現代語で台本棒読みでやるようなもんです(まあ昔ディカプリオが現代版ロミオとジュリエットやってましたけど)。

それで明らかに違和感満載の曲をドヤ顔で演奏されても、ヘンデルさんからしたら、いやそれ自分の意図してる曲と全然ちゃうねんけど!ってなりますやろ。なんかもう明らかに間違った感じのアメリカの日本食レストランで天ぷらうどん注文したらエビフライ入ってたみたいな感覚?それでいて、それをあたかも本場の味みたいに宣伝してるレストランとその料理しか食べたことの無い人がめっちゃ勘違いしてるみたいな憤り?

 

そんな事を考えながら、この間、7年生を教えている時に聞いてみました。

 

ヘンデルって知ってる?

 

「知りません」

 

ちなみに何人やと思う?

 

「スペイン人?」

 

何の楽器弾いてた人やと思う?

 

「マリンバ?」

 

。。。。うーん、なんか逆におもろいなそれ(笑)

音楽教育の難しさを痛感しました。