本番に緊張して失敗しない対策法
前のブログで本番前の不安やストレスと向き合う方法について少し触れました。
前回お受けしたマスタークラスで
Stage Fright and Performance Preperation
本番に緊張しないようにする対策法
について話をしたので、ブログでも紹介しようと思います。
緊張も失敗もして当然
緊張せずに完璧に演奏できるにこしたことはないですが、私の経験上そんなことが出来たためしはありません(笑)いつもと違う場所、照明、音響、観客など、環境が変わると緊張するのは当たり前です。なので、緊張しないようにする対策より、緊張した時にどう対処するかを考える必要があります。
傾向や症状の分析
緊張するとアドレナリンの効果で心臓がバクバクしたり、手足が震えたりします。人によって症状は変わりますが、私の場合は顔が火照って鼻水が出たり、手汗をかいたりします。旦那さんはホルン吹きですが、口が渇いたり顎に力が入ったりするそうです。たまにお腹が痛くなったり吐き気をもよおす人もいます。
私が一番困るのは、集中できなくなる事です。頭の中でセルフトークが始まって集中しろ集中しろと言い聞かせても逆にどんどん集中できなくなります。
緊張した時にどうなるのかが分かってくると対策が取りやすくなります。
ポジティブ変換
前述した症状はやっかいなので追い払ってしまいたいんですが、来んな来んなって言ってもやって来ます。なぜならそれは体が危機を察して繰り出す自己防衛メカニズムだからです。
なので、こんな時は自分に「僕は死にましぇん」と言い聞かせましょう。古い?
それはジェットコースターに乗る時やお化け屋敷に入る時の感覚に似ています。めっちゃ怖いはずなのに楽しむ事ができるのはなぜかというと、絶対安全であるというのが前提にあるからです。貞子は絶対にテレビから出てこないと分かってるから楽しめるんです。これも古い?
ここで重要なのがこの緊張感を楽しめるようにポジティブにエネルギーを変換することです。逆に緊張しなさすぎても集中できなくていい演奏ができません。アドレナリンは必ずしも悪いことではないのです。
メンタル練習
ではどのような安全対策をとればいいのでしょうか。
練習する際に、いつも同じ様に練習していると体が勝手に覚えてあまり何も考えなくても弾けるようになります。これはとてもいい事ですが、本番緊張すると、このオートマティックな事を頭で考えてしまって逆に弾けなくなってしまいます。
オートマの車しか運転してないと、トランスミッションが壊れた時に対処できなくなります。なので、普段からマニュアルで運転できるように練習しておくと、何かあった時に焦らず切り替えられます。
このマニュアルの練習が楽器の場合はメンタル練習になります。
わざとゆっくり弾いたり、ランダムな場所から弾いてみたりする事で手より頭を使って練習出来ます。曲の形式やコード進行などを考えながら練習したり、実際それを地図のようにノートに書き出してみたりするのもいい練習になります。
疑似体験
普段同じ部屋でずっと練習していると、環境が変わった時に対応しづらいです。先に書いたように本番のホールの音響、照明、空調設備等が前もって分かっていると対策が立てやすいです。そして出来るだけ本番の状態を練習中に疑似体験するようにします。実際ホールでリハーサルできるなら、照明や空調も調節して、本番用の衣装や髪型でリハーサルに臨む事をお勧めします。
スティックが袖に引っかかったり、髪飾りが落ちてきたり、靴の音が気になったりすると演奏に集中しづらいので、そういう服装は避けるか、慣れるように前もって練習するに越したことはないです。
誰かに聞いてもらうのもいい練習になります。緊張する状況で練習する事を繰り返して、本番緊張する事に慣らします。誰も聞いてくれる人がいなければ、録音するのが効果的です。私は本番2週間前からスマホを譜面台において通しの録音を必ずするようにしています。本番ウォームアップする時間がない事も考慮して練習の初めにいきなり通しの録音をしてみると自分のウィークポイントがよく分かるので、その後に効率的に練習できます。
ギリギリで変更しない
本番当日はもとより、1週間前くらいからは、あまり変更を加えない方がいいです。欲が出てもうちょっと早く弾けるんじゃないかとか、もう一曲簡単な曲を増やそうかとか考えがよぎりますが、ギリギリで変更してうまく行く事はあまりありません。
私の生徒はよく本番だけ感情豊かに大げさな動きで弾こうとして失敗します。そういう動きをしたいなら練習中から人目を気にせず感情豊かに練習した方がいいです。
当日の食べ物も、縁起がいいからって朝から普段食べないカツ丼を食べたり、普段飲まないコーヒーを飲んだりすると、本番の緊張も重なって大変なことになります。
オーディションの待ち時間も、他の人の弾き方と比べたりして、こっちの方がいいんじゃないかなとか無駄な思考がよぎりますが、普段通りのウォームアップをして、後は自分のレコーディングを聞くなりしていつも通りに演奏する方がいいです。
やれるだけやったら自分を信じる
前にも書きましたが、これだけ安全対策をしているので何があっても大丈夫と自分に言い聞かせ、本番の緊張感やお客さんとの一体感を楽しんで、自分の音楽を表現しましょう。これはオーディションや大会でも同じことです。失敗を恐れて控えめな演奏をしても心に残る演奏は出来ません。失敗しても大丈夫!自分を信じて本番に挑みましょう。
長々と書きましたが、詳しいことは私の博士論文でも紹介しているので、英語のみですが、興味がある方は読んでみてください。