まいちょんの学びの部屋

アメリカ在住ママ兼打楽器奏者の日々の学びをシェアするブログ

現代音楽との出会い ② Ji Hye Jung

前回、私の現代音楽との出会いについて少し書いてみました。

 

maichon.hatenablog.com

 今回はその続きです。

 

テキサス大学で修士号を取った後、一旦母校のミズーリ大学カンザスシティ校に戻りました。そんなある時、

 

隣のカンザス大学にすごい先生が来たらしい

 

という噂を耳にしました。それも一人からではなく、複数の人から聞きました。

 

知り合いのカンザス大学のチューバの教授によると、その先生(ジーへー)はイェール大学院新卒の韓国人で、25歳と若い上に、博士号も無く(アメリカの大きな大学で教授になるには博士号は必須)、書類審査で落とされかけたにも関わらず、イェール大学のボスから電話があって、彼女を採らないと大損ですよと強く押され、試しにインタビューに呼んでみたら全会一致で採用されたというツワモノです。そして恐ろしいことに、その先生は私と同い年でした (汗)

 

早速レッスンを受けてみると、

 

めっちゃシックリきました

 

ミズーリ大学の先生は基礎の話ばっかりで堅苦しかったし、テキサス大学の先生は忙しくてあまり親身に教えてくれませんでした。ジーへーはずば抜けてうまいだけでなく、レッスンも的確で分かりやすく、音楽的なことも教えてくれるし、何よりアジア人の厳しい感じが一番しっくりきました。アメリカは褒めて伸ばす教育が主流ですが、私はアメリカ人の先生にベタ褒めされても、絶対それウソとか思ってあまり効果がないんです(笑)

 

でもさすがに初対面のレッスンで厳しく物言われた時はちょっとびっくりしました。そんな私を見て、彼女は、

 

「私めったに褒めないから。上手くなりたくてレッスン受けに来たんでしょ?褒めてほしかったらお母さんに頼みなさい」

 

と言い放ちました。確かにその通りだと思い、すぐに「弟子入りしたいんですけど」とお願いしたら、

 

来学期から編入していいよ

 

とあっさりその場で承諾してくれました。しかもジーへーのアシスタントにしてくれました。

 

そんなこんなでバタバタと編入手続きをしてカンザス大学に行くことになりました。

そして人生で初めてのスパルタ練習三昧の日々がスタートしました。

 

私の現代音楽のレパートリーの乏しさを知ったジーへーは、次から次へと現代音楽ばっかり薦めてきました。というか有無も言わせず強制されました。好き嫌いせずに出すもん食べろ的な肝っ玉母ちゃん風な教育スタイルで、好きなことをやらせてくれたテキサス大学の先生とは大違いでした。でも確かに食わず嫌いはよくないので教えてもらえる機会を無駄にしないようにと思ってがむしゃらに練習しました。

 

ジーヘーには色んな事を教わりました。

 

  •  固定観念にとらわれない事

クラシック音楽は綺麗な音への追求によってうみ出された一つの表現方法だけど、それを追求するあまり、色んな可能性を逆に失ってしまっています。特にクラシック上がりの人は小さい頃から耳を鍛えて、音楽理論を勉強して、クラシックのルールに従順に従うようにトレーニングされているので、ルール外の事=悪みたいに感じてしまう事が多いです。なので、そのルールを完全無視した現代音楽を受け入れづらくなってしまいます。

 

  • クラシックの色眼鏡を使わずに曲の個性や魅力をくみ取る事

ハーモニーやメロディーだけが曲の全てではなく、音色、音質、テクスチャー、リズムの組み立て方など、他にも曲それぞれに違う個性があります。それをうまくくみ取って表現する事の重要性を学びました。綺麗な音楽がすべてじゃない。時には汚い音を出すことも必要で、わざと音程をはずしたり、リズムをずらしたりすることによって生まれる不協和音や音の摩擦がその曲の魅力になることもあります。私はこれをワサビ効果と勝手に呼んでいます。

 

  • 打楽器奏者ではない本物の作曲家が作曲した曲を啓蒙する事

打楽器はソロ楽器として認められ始めたのは20世紀に入ってからなのでレパートリーの量が他の楽器とくらべてかなり少ないのが現実です。そして、打楽器のソロのレパートリーはほとんどが打楽器奏者によって作曲された曲です。

打楽器奏者が作曲した曲は手になじむのでかなり弾きやすいですが、弾きやすいがためにあまり学ぶものがありません。そして、曲自体もプロの作曲家の曲に比べておそまつだったりします。

 

打楽器奏者以外の人が書いた曲は、弾きやすさではなく、曲自身にフォーカスされてるので、たまにめっちゃ弾きづらいです!

 

しかも難しいのに全然難しそうにみえなかったりします。

いやそれ無理やろっていう事も平気で要求されたりします。 

弾きづらいので練習しててもかなりイラっとします。

 

でもジーヘーによると、

 

チャレンジがあるからこそ成長できるんです!

分かりやすいへちょい曲だけ弾いて満足していてはダメなんです!

 

確かに今打楽器のテクニックはどんどん進化していて、私が大学で習った曲は、今では中学生でも弾けたりします。それもこれも先人達が築き上げ、受け継いでくれた技のお陰です。

 

なので今の時代を生きる打楽器奏者も、どんどん作曲家に曲を依頼して打楽器界にもっといい曲達を送り出して、レベルを上げていく事に貢献しないといけません。

 

なんか宗教の宣伝みたいになってきました(笑)

 

でもこれらは打楽器だけの話ではなく、普通に生活する上でも大切な事だと思います。

 

現代音楽はやればやるほど奥が深いです。

 

 

ちなみにジーヘーは今ではヴァンダービルト大学の教授になって世界中を飛び回ってます。

 

私が言うのも何ですが、世界で一番うまいマリンバ奏者だと思います。彼女の演奏はこちらから見れますよ↓

http://jihyepercussion.com/media/